TOSHIMI物語 – Part5── 未完成のまま、イタリアへ

TOSHIMI T

未完成のまま、イタリアへ

――「完成」を待たない、という選択

この物語は、OBBIJIN奮闘記

KIWAKA物語を経て

私が“第二の挑戦”として歩み始めた
TOSHIMIというブランド構築の記録です。

今回は、

「まだ完成していない状態で、

なぜ次のステージへ進んだのか」
その判断と背景をお伝えします。


1.完成が近づくほど、課題は研ぎ澄まされる

2019年に入り、私は一刻も早く

TOSHIMIを完成させたい と考えていました。

パーティーバッグは、
プロダクトとしての形を成しつつありましたが
残された課題は決して小さくありません。

  • 社交の場にふさわしい“レベル”に、どう到達するか

  • バッグを収めるケースは、既製品では成立しない

  • 引手と連動するジュエリーを、どう位置づけるか

ここで重要だと考えたのは
「すべてを同時に解決しようとしない」という判断でした。


2.プロダクトの“世界観”を揃える

まず着手したのは
バッグとお揃いとなるジュエリーの制作です。

当初は
「iTOP™の新デザインを増やすべきか」
という迷いもありました。

しかし、
もし自分が社交の場に持って行くなら──
やはりバッグと世界観を共有するジュエリーが欲しい

そう考え直し、iTOP™と同じ技法で
薔薇モチーフのネックレス・ピアス・リングを
デザインすることに決めました。

ここで意識したのは、単品の完成度ではなく
“持った人の姿”が美しく立ち上がるかどうか
でした。


3.「包む」という価値を設計する

次に取り組んだのが、
バッグを収めるケースの設計でした。

一点物である以上、

ケースもまた“既製品では成立しない”。

日本の高級品文化には桐箱という優れた知恵があります。

その特性を活かし、大阪の工場で試作を重ね
蓋には、多角形のTOSHIMIロゴを箔押し。

桐箱の内装については、
バッグ縫製を依頼している靴職人さんに相談し
器用な手仕事で、思い描いた通りに仕上げてもらいました。

さらに、箱を包むのは 風呂敷
高貴な紫の縮緬にTOSHIMIのロゴを入れました。

プロダクトとは、
「中身だけで完結するものではない」
という考えを、ここで改めて実感します。


4.最大の課題を残したまま、次の一手へ

それでもなお、最大の課題は残っていました。

社交界にふさわしいファスナー引手の“見せ方”

答えが出ないまま、私はWeb用の撮影準備を進めます。

なぜなら、「時間」はタイミング。

そして・・・「考え続ける」だけでは
次の景色は見えないと感じていたからです。


5.「とにかく、ミラノまでおいで」

撮影を依頼したのは、
2017年のイタリア出張で出会ったプロカメラマンのFlavio氏

Vogueでも活躍された実績がある彼に、
「TOSHIMIを撮ってもらうなら、この人しかいない」
そう決めていました。

とはいえ、不安がなかったわけではありません。

それでも勇気を出して連絡すると、
返ってきた言葉は、意外にもシンプルでした。

「とにかく、ミラノまでおいで。」

未完成のまま、

ファスナー引手の答えを出し切れないまま。
私はすべてのプロダクトを持って

イタリアへ向かいました。


6.プロフェッショナルに委ねるということ

スタジオに到着し、

TOSHIMIのパーティーバッグを見るなり
Flavio氏は、言葉を発することなく

直感のまま撮影を開始しました。

集中した横顔。
静かに響くシャッター音。

私はその姿を見ながら、
「この人に委ねてよかった」と心から思いました。

現在、Webサイト、ブランドブック、ポストカードに

使用している写真は、すべて彼の作品です。

未完成だったけれど、
そのタイミングで撮影に挑んだからこそ
辿り着けた表現があった

今では、そう確信しています。


私からお伝えしたいこと

このPartでお伝えしたいのは、
「完成してから動く」だけが正解ではないということです。

千里の道も一歩から」にも書きましたが

見切り発車でも構わない。

分からないから行動する。

行動すると誰かが協力してくれて

カタチになって行くと言う事です。

  • 機会は、準備が整うまで待ってくれない

  • プロフェッショナルに委ねることで見える景色がある

  • 未完成だからこそ、次の判断材料が手に入る

TOSHIMIは、まだ完成していませんでした。

けれど、確実に“次の扉”へ進んでいました。

つづく──