――「核」を可視化するための意思決定
この物語は「OBBIJIN奮闘記」「KIWAKA物語」
を経て、私が“第二の挑戦”として歩み始めた
TOSHIMIというブランド構築の記録です。
今回は、
「ブランドの核を、どのように“形”へ落とし込んだのか」
その具体的な意思決定とプロセスについてお話しします。
「iTOP™を宝石にするなら、
それにふさわしい“器”が必要だ。」
TOSHIMIというブランド構想が
ようやく輪郭を持ち始めた頃
私の中で自然と導き出された答えが
“パーティーバッグ” でした。
主役はあくまで
宝石を用いたオリジナルファスナー引手「iTOP™」。
その価値を最大限に引き立てるには、日常使いではなく
非日常の場にふさわしいプロダクトが必要だと考えたのです。
バッグの素材に選んだのは、最高峰のエキゾチックレザー
ポロサス(クロコダイル革)。
希少性、美しさ、品格。
どれを取っても、TOSHIMIの方向性に合致していました。
しかし、すぐに大きな課題に直面します。
「この素材を“一点物”として縫製できる工房がない」
量産前提ではなく、一点一点の完成度を追求する。
この条件を満たす先は、想像以上に見つかりませんでした。
行き詰まりを感じた私は
大手アパレルでキャリアを積み、
同時期に新規事業を立ち上げていた友人に相談しました。
そこで名前が挙がったのが、長年の飲み友達である C氏。
これまで仕事の相談をしたことはありませんでしたが
思い切って構想を打ち明けてみると、
彼は驚くほど真剣に耳を傾けてくれました。
C氏は、ジュエリー学校の講師を経て
現在はクリエーター育成や地域活性化にも携わる人物。
そのネットワークの中から、
私の条件に合致する職人を紹介してくれたのです。
紹介されたのは、若くしてパリコレ経験を持つ靴職人。
革製品に限らず、一点物の表現力に長けた方でした。
私は、
「iTOP™が主役として際立つクラシカルなパーティーバッグ」
というイメージを伝えました。
さらに、バッグを開いた瞬間に
視線を惹きつける“内側の色”も必要だと考えていました。
職人さんに連れられて訪れた革屋で出会ったのが
屏風のように輝く 黄金色の革。
この時、「コンセプトと素材が一致した」
という感覚を、はっきりと覚えています。
同時に進めていたのが、
iTOP™そのもののデザイン再構築です。
KIWAKAでは
「金杯」をモチーフにした引手が支持されましたが
TOSHIMIでは、よりエレガントで、
より象徴性のある造形が必要だと感じていました。
言葉を洗い出し、書き続けて
イメージを深掘りする中で辿り着いたモチーフが
「薔薇」。
しかも、「サムライ」という名を持つ薔薇でした。
華やかさと強さを併せ持つ造形は、
TOSHIMIの思想そのものだと感じました。
ファスナー会社、宝石会社、バッグ職人、C氏。
関わる全員が妥協せず、打ち合わせと試作を重ね
三度目でようやく理想に近づいていきます。
並行してロゴ制作も進行。
「TOSHIMI」のアルファベットを多角形で構成し、
最後の “i” にはファスナー引手を象徴する意味を込めました。
2019年2月頃、パーティーバッグは
ようやく“形”として立ち上がり始めます。
しかし同時に、新たな課題も明確になります。
ファスナー引手を、どう美しく収めるか
バッグを収めるケースは、既製品では成立しない
バッグと連動するジュエリーは必要か
KIWAKAの時とは、まったく異なる次元のブランド設計が
私を待っていました。
この段階で私が学んだのは、
「コンセプトを本気で形にしようとすると
必ず“想定外の課題”が現れる」 ということです。
けれど、それは失敗ではなく、本質に近づいている証拠。
TOSHIMIは、ここからさらに試されていきます。
つづく──